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日本人とサウジアラビア人のゲノム情報を反映した新しい「ゲノム地図」を作成
国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所
九州大学
東京大学
情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設 ライフサイエンス統合データベースセンター
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJセンター
発表者
河合 洋介(国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所 ゲノム医科学プロジェクト 副プロジェクト長)
発表のポイント
- 10人の日本人と9人のサウジアラビア人の実質的に完全なゲノム配列を決定
- 個人間のゲノム配列の違いを表す「パンゲノムグラフ」によって複雑なゲノム構造が明らかに
- ロングリードシーケンサーなどの最先端の技術を活用
- 地域に特化した精密医療・遺伝子診断の基盤を提供
概要
国立健康危機管理研究機構(東京都新宿区、理事長:國土典宏) 国立国際医療研究所 ゲノム医科学プロジェクト 河合洋介 副プロジェクト長、サイデ・アシュリ特任研究員、徳永勝士プロジェクト長らは、アブドラ国王科学技術大学(サウジアラビア王国)とライフサイエンス統合データベースセンター、九州大学、東京大学、国立遺伝学研究所と共同で、日本人とサウジアラビア人の完全長ゲノム配列を決定して、公共データベースに登録しました。
これまでのゲノム研究では、特定の1人のゲノム配列を基準とする方法が使われてきましたが、これでは地域に特有の遺伝的な違いが反映されにくいという課題がありました。今回、日本とサウジアラビアの研究者を中心とする国際チームで、両国のゲノム多様性を反映した新しいパンゲノムグラフ(注1)「JaSaPaGe」を開発しました。このパンゲノムグラフは、日本人10人とサウジアラビア人9人の高品質な全ゲノムデータをもとに構築されたもので、従来の方法に比べてより多くの遺伝的変異を高精度に検出可能であることが示されました。研究成果はFAIR原則(注2)に基づき、誰でも自由に利用可能な形でデータを公開しています。これにより、日本や中東地域を含む多様な人々の遺伝情報を反映した、より正確で公平なゲノム研究が進展することが期待されます。
用語説明
(注1)パンゲノムグラフ:
ヒトのゲノムは、全体としては共通した配列を持っていますが、人によって少しずつ違いがあります。これまでの遺伝子解析では、ひとつの代表的なゲノム配列(参照配列)だけを基準に使っていましたが、それでは他の人にしかない遺伝的な特徴が見つかりにくいという問題がありました。パンゲノムグラフは、複数の人のゲノム情報をまとめて比較・統合できる、新しいデータの表現方法です。個人ごとの違いもすべて含めて記録するため、これまで見つけにくかった変異や特徴も検出しやすくなります。 動脈系においてはアセチルコリンなどによって血管内皮細胞のNO合成酵素が活性化しNO産生が上昇します。NOが内皮細胞に近接した血管平滑筋細胞を弛緩させることで血管が拡張します。
(注2)FAIR原則:
FAIR原則とは、研究で得られたデータをより多くの人にとって使いやすくするための国際的な考え方です。FAIRという言葉は、「見つけやすく(Findable)」「アクセスしやすく(Accessible)」「他のシステムと連携しやすく(Interoperable)」「再利用しやすい(Reusable)」という4つの基本的な考えを表しています。この原則に従ってデータを整理・公開することで、研究者だけでなく、医療関係者や開発者などさまざまな人が必要なデータをすぐに見つけて使えるようになります。また、他の研究との組み合わせや再利用もスムーズになり、科学の発展や社会への応用が加速します。
詳細は以下のファイルをご覧ください。
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