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病原体生体膜リン脂質合成酵素(LPLAT)群の発見~新たな創薬ターゲット~
2026年8月27日
国立健康危機管理研究機構
発表者
進藤 英雄(国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所 脂質生命科学研究部 テニュアトラック部長)
発表のポイント
- 生物は生体膜で覆われて生きており、膜の主成分であるリン脂質(注1)は多くの分子の集合です
- 生体膜リン脂質の多様性に大きく影響する遺伝子(LPLAT、注2)候補を多種生物種で発見しました。
- ヒトなど哺乳類には最も多い14種類のLPLATが存在します。
- 病原体もそれぞれに特徴的なLPLATを持ちました。
- 新しい視点の創薬ポイントの提唱です。
概要
国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所 脂質生命科学研究部の進藤英雄テニュアトラック部長は、国立遺伝学研究所 河合洋介博士とともに、多種生物種の生体膜リン脂質合成酵素(LPLAT)の候補遺伝子群を発見しました。病原体のLPLATも含まれています。
全ての細胞は生体膜(細胞膜)を持ち、その主成分はリン脂質です。この膜のおかげで生物は様々な進化を遂げていると考えられます。このリン脂質の多様性を形成するのがリゾリン脂質アシル転移酵素(LPLAT)で、ヒトやマウスなど哺乳類は14種類を持っています。今回、Adlらの生物分類(J Eukaryot Microbiol. (2019) 66:4–119)に従い、代表的な生物種として。脊椎動物、無脊椎動物、大腸菌、酵母、襟鞭毛虫、アメーバ、マラリア原虫、植物(シロイヌナズナ)、寄生虫(トリパノソーマ)のLPLATの探索を行いました。生化学的な特徴が少し分かっているヒトのLPLATと合わせて分子系統樹により比較しました。脊椎動物など多様な機能を持つ生物ほどLPLATの種類は多く、酵母、マラリア原虫、寄生虫などでは少ないです。また、病原性を持つ大腸菌O157は非病原性の大腸菌よりも余分にLPLATが見つかりました。病原性を持つ赤痢アメーバも同様に非病原性アメーバより多く見つかりました。しかし、今回の研究で、このLPLATが本当に余分に存在するのか、病原性獲得に重要であるのかを判定できません。データベースの充実度や探索方法にも影響を受けます。今後の生化学的なLPLAT機能の検証が必要です。
病原体LPLATは数が少なく、阻害することで病原体を死滅させられる可能性があります。新たな視点の感染症治療薬開発ポイントと考えられます。私たちは広範囲に病原体LPLATを探索し、生化学的な検証の後に阻害剤開発を行っていきます。同時に、膜リン脂質と生物進化の研究でもあります。

用語説明
(注1)リン脂質:主に生体膜(細胞膜)に存在します。グリセロール骨格を持ち、脂肪酸を2つ持ちます。脂肪酸には、ドコサヘキサエン酸(DHA)やアラキドン酸が含まれます。
(注2)LPLAT:脂肪酸を1本持つリゾリン脂質に脂肪酸をもう一つ与えて、脂肪酸を2本持つリン脂質を合成する酵素です。ヒトでは14種のLPLATがバランスよく働き、私たちの細胞の膜を形成しています。私たちの体にはリン脂質は1000-1500分子種存在します。
詳細は以下のファイルをご覧ください。
♢リリース文書















